クラシック音楽を楽しむ広場

クラシック音楽を聴いた感想を記します。

トスティの歌曲 松本美和子さん(ソプラノ)

 19世紀のイタリアでは、オペラが最高の盛り上がりを見せていた時期です。オペラを作ってこそ、作曲者として認められる時代でした。


 そうした世間の風潮に流されず、ひたすら、わが道をいくで、活躍したのが、歌曲作曲家フランチェスコ・パオロ・トスティです。ローマを根拠地として、作曲活動を行なった人です。

 私が、この作曲家に興味を持った理由は、若い時分、音大生の友人が声楽科の友人を紹介してくれるというので、その方が、当時、レッスンで、トスティに取り組んでいると聞き、話が盛り上がるよう、予習するためでした。1枚だけCDを買い、今でも時々聴いています。

 彼がナポリの音楽院で学び始めたのは、才能を認められた11歳のときでした。1866年、20歳の時、故郷に戻り、オルガニストや指揮者として務めましたが、1870年代末にはローマに移住し、知識階級・上流階級の仲間入りを果たします。
 そこで彼の才能を認めたのが、イタリア国王妃のマルゲリータで、宮廷の声楽教師と宮廷図書室の管理者に任命します。
 間もなく、国際的に名声を得るようになって、29歳のときにロンドンに移り、ヴィクトリア女王に引き立てられ、王宮付声楽教師に就任し、貴族の子女に音楽を教え、そうしたこともあり、歌曲を次々創作していったのです。70歳の生涯を通じて、500曲の歌曲を創り、抒情的な歌詞にそった、品格ある美しい曲を創りました。

 とにかく、どの曲をきいても、洗練さがあり、世間に迎合するだけで、これらの作品が創れるはずもなく、本人自身も、持って生まれた、人物的にも、音楽的にも品格があったのでしょう。
 日本を代表するソプラノ 松本美和子さんの歌声(ビクター・エンタテインメント レーベル)で聴いています。歌の核心にせまる表現力です。

 こうした小品を聴くと本当に心が洗われるようで、音楽は美しいですし、内容も深いです。

歌の題名も「朝のうた」「もう一度」「わたしを待たないで」「白い夜」「夜明けに」「祈り」など、長く聴ける名曲です。