大曲や交響曲を聴くことに、やや疲れたとき、楽器一つで音楽を奏でる、ギター作品が聴きたくなる時があります。家のクラシックギターを置いているCD棚をふと見たときに、まず、「スペインの城」という曲が目にとまり、いろいろな演奏で聴いていました。今日は、その感想を書きます。
1891年生まれのモレーノ・トローバが、この組曲、スペインの城を作曲したのは、1960年代で、後年、70歳代の作品です。
スペインの各地にある城や、土地を題材にした小品が全部で14曲並んだ曲集ですが、巨匠 セビゴアの演奏は、そのうち8曲にとどまっています。残されたドイツ・グラモフォン版でも8曲の録音です。
セビゴアの演奏は、
1.トゥレガノ(山唄)、
2.トリーハ(悲歌)、
3.マンサナーレス・エル・レアール(美しい乙女に、商人・旅人が利用する国営の宿があったそうです。)、
4.モンテマヨール(静思)、
5.アルカニス(祝祭)、
6.シグエンサ(王女は眠る、6世紀の西ゴート族が築いた砦から歴史が始まります。)、
7.アルバ・デ・トルメス(サラマンカを流れる川の上流にある小さな焼き物の街、吟遊詩人の歌)、
8.セゴビアの王城(召集、ディズニー白雪姫の城のモデルになった王城)から構成されています。
世間では巨匠と言われていますが、改めて聴いてみますと、これら作品が、ギターの音楽であることを認識させられます。ギターの音色が、美しく、作品にいろどりをそえます。それはまた、ギターの音色の良さを引き出し、作品を語らせる演奏にも思えます。
続いて、デイヴィッド・ラッセルによる演奏(TERARC版)を聴いてみます。ラッセルは、全14曲を取り上げた演奏です。追加された6曲は、
サフラ(副題:亡霊、9本の円筒を持つ優美な城)、
シマンカス(シマンカスの城、放浪楽人の歌)トレモロが美しく響きます。
カトラーヴァ(カトラーヴァ城、城からは、ラ・マンチャの大地が見渡せる)、
レダーパ(現存しない城)、
ハビエル(バスク地方の名城、魂の呼び覚まし、フランシスコ・ザビエルの誕生したハビエル城)、
オリテ(バスク地方の街 オリテの古い城、高貴な王の祭り、)。
ラッセルによる演奏は、古城の風景が頭に描かれるような感覚になる魅力的な演奏です。より、理知的な、演奏に思います。
14曲の中で、アルバ・デ・トルメス(吟遊詩人の歌)が、私が一番好きな曲です。
新井伴典 氏による演奏(ALM RECORDS版)で、好きになりました。理由は、ギター曲でありながら、楽器を超えて音楽を奏でている演奏が、とても聴きやすく、愛聴しているからです。何度も聴くうちに、1曲目に入っている「アルバ・デ・トルメス(吟遊詩人の歌)」が、耳になじむようになったことも理由の一つです。
また、ライナーノートが興味深く、各14曲のスペインの城の写真と、歴史コメントが掲載されており、視覚的にもイメージしやすく、曲と一致して、雰囲気をつかむことが出来るからです。
私は、クラシックギターの作曲家と、作品、曲の調べは、まだまだ一致しませんが、ひとまず、持っているCDを作曲者でまとめて、聴き比べをして楽しもうと思っています。
一度、聴いてみてください。楽しめる曲です。
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