クラシック音楽を楽しむ広場

クラシック音楽を聴いた感想を記します。

11年前、街の商店街での買い物、ベートーヴェン:英雄

  11年前、大阪市に、住んでいました。引越し先のその地域で、町を2時間ほど散歩した時のことです。すると、昔ながらの商店街があり、たこ焼き屋洋品店のある一角に、カセットテープもおいているCD屋さんを見つけました。

 クラシック音楽のコーナー棚があり、のぞいてみると、今まで、見たことのないCDが多くありました。すでに廃盤のCDもあり、ただ背帯の部分は、経年で太陽やけして黄ばんでいますが、思わず大人買いしてしまいました。
 店の老夫婦も一度にこれだけ売れることもないのか、レジを打つ際、てまどり、2回打ち直して、印肉のスタンプカードを、うれしそうに押してくれました。
 
 そこで購入した一枚が、カール・ミュンヒンガー指揮シュトゥトガルト放送交響楽団による、ベートーベンの交響曲第3番「英雄」です。

ミュンヒンガー指揮、交響曲第3番「英雄」


 バロック音楽の名演奏で他の追随を許さない大家、カール・ミュンヒンガーに、今までにない響きを期待したのです。
 ミュンヒンガーの指揮ぶりは、バロックを知り尽くした音楽家として、古典様式であるこの英雄交響曲も、聴きごたえのある内容でした。

 この「英雄交響曲」は、スーパースター級のカラヤンらといった巨匠で聴くのも良いですが、作品のテンポ、歌心といった要諦を的確にとらえているミュンヒンガーの指揮も、とても楽しめました。特に、第2楽章の、葬送行進曲は、悲しみと諦めが込められていて、聴いていて、心にしみます。
 
 「英雄」と名前のついているこの交響曲は、ベートーヴェンナポレオン・ボナパルトのことを高く評価し作曲したのでありますが、後に、ナポレオンが皇帝を名乗ったことから、ベートーヴェンは意にそぐわないと、
『あの男もまた平凡な人間に変わりなかった。今や全人類の権利を踏みにじり、自分の野望を満足させようというのだろう。彼も単に専制者になりたいのだ』と怒りを述べました。

 当初、ナポレオンに捧ぐと書いていた楽譜の表紙の部分を破り裂き、改めて、「シンフォニアエロイカ」と名付けたのでした。
 
 ベートーヴェンは、ナポレオンのことを評価し、彼のことを思いながら作曲したのですから、「ナポレオンに捧ぐ」とかかれた表紙を破けばいいという話では済まなくなると私は思うのです。
 
ベートーヴェンの作品自体への思いが、創作後、変わったこの曲は、聴く人の姿勢を問いている」と私は思います。

 だから私は、この曲を標題付「英雄」としては、聴きません。あくまで、交響曲の一つとして聴いています。