クラシック音楽を楽しむ広場

クラシック音楽を聴いた感想を記します。

ニキータ・マガロフ(pf) スクリャービン エチュード全集

 今では、ネットを通して、CDを購入したり、また音楽を聴く時代の趨勢ですが、在庫が豊富な店舗型CDショップが、近くにあった時は、まさに「買い物にいく」の楽しみがありました。事前に、レコード芸術を読んで、今日はこれを購入すると、決めて買いに行くケースも多かったですし、棚に並ぶCDとの出会いが買い物の醍醐味でした。

 ふと手に取り、私にとり、最高峰の愛聴版となったCDがこれです。[VALOIS]というレーベルから出ている1992年の録音です。

① 最初の作品「エチュード OP.2の1」から、スクリャービンの世界に惹きこまれます。
 和音の中から、メロディを歌わせる練習曲です。スクリャービン14歳の時の作品といわれています。

② 続いて、OP.8 12のエチュード
 19歳の時に完成させたこの曲集は、ロマン派の影響を受けながらも、スクリャービン独特の響きを聴くことができます。たとえば3連音符と5連音符の異なる二つのリズムを同じ流れで進行させるクロス・リズムにも特徴があります。

 「第12番」 悲愴のタイトルのついた曲は、ホロヴィッツが演奏会で、よく取り上げた曲です。私は、若い時に練習に取り組みましたが、難曲でした。

③ 8つのエチュード OP.42
 クロス・リズムさらに推し進められ、調性のわくから飛躍した作品が多いのが特徴です。
 「第5番 嬰ハ短調」 この作品の芸術度は非常に充実していると思います。はかなさの中にも、はっきりとした意思の強さを感じます。

④ 3つのエチュード OP.65
スクリャービン独自の神秘主義の時期1912年に完成した作品。
 

 マガロフの演奏は不協和音を心地よく官能的、かつ透明なガラスのように明確に、響かせます。作品の本質を余すところなく語りつくすマガロフの力量には惚れぼれします。
 スクリャービンのロマン派から神秘主義に傾倒していった流れが、ピアノ作品を通してよくわかる1枚です。