初めてハイティンクの聴いたのは、ウィーンフィルを指揮するブルックナー第4番「ロマンティック」であった。ブルックナーを聴いたことも初めてで、ハイティンクという指揮者を聴いたのも初めてでの、先入観なしの感想は、特に、ロマンティックの導入部分を聴いて、「暗く重い音を出す音楽家だな」でした。
ドイツ後期ロマン派の「重厚」さが頭の知識としてあっても、そのCDを初めて聴いたときは、暗い森から聞こえてくる音色だなと感じました。
今日は、イギリス音楽が聴きたいと思い、帰宅してくつろぎの時間に、取り出した作曲家は、ホルスト、「惑星」。
ライナーノーツを一読すると、「1980年代前半は、退屈な演奏をする指揮者のように思われていて、批評家の受けも悪かった」と記載があります。
では、一曲目の「火星」から聴いてみると、多くの指揮者の進め方と比較して、テンポがゆっくり、確実に一音・一音を鳴らしています。この録音が1970年なので、退屈と評される前の時期であったことになり、より退屈な演奏なのでしょうか。
そうでは、ありません。私は音楽は、作曲家の作品に誠実に向かい合うことが大事と考えていますので、この演奏は、作曲されてから54年たっており、楽譜に、実に忠実な演奏であると思います。
大阪の梅田に、ササヤ書店という楽譜専門店があり、以前、「惑星」の管弦楽曲の楽譜は、どのようになっているのかと見たところ、楽器パートごとに、何段もあり、正直、頭の中に構築できず、読み込めませんでした。
とはいえ、このように鳴らすことを期待しているという作曲者の意図を反映しているのが、このハイティンクの演奏が近いと思います。
特に、有名曲、「木星」においても、しっかり、かみしめるように、テンポは、中庸ゆっくり目で、踏み固めるように奏でる演奏は、他にはない魅力がります。
ここには、きらびやかさは、ありません。「曲の組み立て」という本来の音を鳴らしたときだけに現れる音楽の姿を聴くことが出来ます。
惑星を唄った曲ですが、ドイツ、フランス音楽とは、違うどこかしら、イギリス音楽の祝祭的な音楽の響きがそこにあります。
スポーツカーに乗ったようなスピード感あふれる、また、きらびやかな演奏とは異なるイギリス独特の、音色がします。
イギリス。首都ロンドンから、少し離れると、船でのんびり小旅行で、グリニッジ天文台があり、もう少し半日の旅行気分で、ストーンヘンジを見ることが出来ます。
若い時に、語学習得留学(+博物館・美術館巡り)、に行ったロンドンを思い出しました。ロンドン中心部には、タワーレコード、HMVがありました。(25年前)。CDショップのレジの店員さんは、ガムを噛んでいて、店員も鷹揚だなあ、と思いました。また、店舗の棚を見ると、知らない作曲家が多く、(日本では、有名作曲家が、AからZまで、並び、現代音楽に、知られていない作曲家がいますが)
ヨーロッパ?の地元では、世界的に有名でなくても、力量ある作曲家を、今の音楽家が録音し、紹介しているのかなと思いました。
いずれにせよ、今、CDを聴きながら、書いていますが、天王星から海王星に来ました。一曲通して聴きましたが、本当に実直な演奏であると思います。
このハイティンク、別の一面では、ショスタコービッチ全曲録音を、当時、1977年から1984年にかけ録音しており、質も高く、聴きごたえがあります。
武満徹の曲も取り上げるなど、曲の本質を、自身に取り込んで、解釈を世に問うような演奏です。
みなさん、ハイティンクのお気に入りCDの一枚が、あれば、教えてください。隠れた巨匠が刻んだ偉大な音楽体験を共有したいです。よろしくお願いいたします。